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ノベライズ人狼 1日目 夜

――1日目 20:44 村の酒場にて

「…さて。我々は今後、どうすべきかということについてだが…」

どうするべきか、と発言している本人も何をどうしたら良いのだろう、
という戸惑いが多分に含まれているのだろう。
強面ながら生真面目な鉱夫のドーハンが、一同を見渡してそう言った。

「どうする、とはおっしゃいますけどね。
 そもそも、その鏡は本物なの?
 鏡が喋るなんて非常識だわ、ネタとしてはおいしいけど」

困ったような、面白がっているような。
微妙な表情を浮かべたのは、ジョセフィンだった。
元々は街で小説家としてヒットし始めたそうで、私は面識がなかったけれど
今日はこの村に取材目的で滞在している、とのことだった。
人狼伝説の言い伝えについて調べにきて、それに巻き込まれるなんて。

(不運な人だなぁ)

自分が当事者である実感も今ひとつ湧かない私は、
どこか他人事のように感じていた。

「今更それを疑っても仕方ないだろう。
 あの"不思議な鏡"の信憑性については、眉唾ではあるが
 昔この村で人狼騒ぎがあった頃もそれを予言したという話だ。
 非常に馬鹿馬鹿しいが、まずは真実である前提で話をするべきだろうな」

一同の座るテーブルに、いくつかの小料理を乗せたお皿を
運んできたダブディをぼんやりと眺めながら、
自分のカバンから手帳を取り出し、"鏡"の話を思い出す。

曰く。
『この村には人狼が潜んでいます。村人よ、人のフリをした人狼を探しなさい。
 人狼を見つけられなければ、あなた方は皆が亡くなることになるでしょう。
 そして、あなた方を食べ尽くした人狼は、次は他の村へと出て行くのです。
 村人よ、私はあなた方の村に潜む者の、数だけを知ることができます。
 この村には…。

 11人のヒトがいます。
 5人は村人です。
 1人は狩人です。
 1人は占い師です。
 1人は霊能者です。

 2人は人狼です。
 1人は狂信者です。

 
 狩人は、狼の襲撃から誰かを守ることができるでしょう。
 しかし、彼は自身を守ることはできません。

 占い師は、一晩をかけて占った相手が人か狼かを判断できるでしょう。
 しかし、彼には人が"狂っているか、正常か"は解りません。

 霊能者は、一晩かけて遺体が人であったか、狼であったかを判断できるでしょう。
 しかし、彼にも、人が"狂っているかどうか"は解りません。

 狂信者は、間違いなく人間です。
 しかし、彼は人狼の魅力に取り込まれ、あなた方の死を願っています。
 今この瞬間にも、彼は人狼達と密かに話をしているでしょう。

 人狼は、あなた方を一晩に1人ずつ襲撃します。
 食事にするためです。
 彼らは一晩に1人以上は襲いません、食べきれないからです。
 そして、彼らは縄で首を吊るし、処刑することでのみ退治することができます。
 彼らは、首を吊られる以外では死にません。

 さあ、村人よ。
 あなた方は、一晩に一人ずつ、誰か村の人間を処刑しなければなりません。
 あなた方"人間"が、狼よりも少なくなってしまった時。
 彼らは人間のフリをやめて、あなた方を全滅させるでしょう。
 
 さあ、村人よ。
 あなた方は生き残ることができるでしょうか。』

もし、あの鏡が言ったことが本当だったなら。
親しんだ村の人達を疑わなくちゃいけない。
そして、処刑。

つまり…。

(殺さなくちゃ、いけないんだ。生き残るために)

自分の思考の中にある言葉に、思わず背筋が震えた。
顔見知りの人間を、疑って、その上で殺さなければいけない。

私達が何をしたというのだろう。
人狼は、なぜ私達を襲おうとするのだろう。
本当に人狼なんて、いるのだろうか。
ただの御伽噺にすぎなくて、明日には結局何事もなくて―――

「こら、フニクリ。
 あなたはどうなの?
 【フニクリは霊能者なの?】

取り留めのない思考に割り込んだジュリエットの声に、思わず驚いた私は
テーブルを見つめていた顔を慌てて正面に上げた。
目の前に座るジュリエットが、私の顔を訝しげに見つめていた。

視線を感じて周りを見渡してみると、別のテーブルに集まった
村人たちも私達…私のことを見つめていた。

「ち、違うよ。
 私は【霊能者なんかじゃない】。
 だって、前におじいちゃんやおばあちゃんのお葬式をした時だって、
 そんなことは解らなかったもの。考えもしなかった」

村唯一の酒場、その店内に私達村人は集まっていた。
店内中央の、最も大きな円形のテーブルにほとんどの人は座っていたが、
私は何となくそういう気分にもなれず、ジュリエットを誘って
円卓の隣にある、4人がけの小さなテーブルに向かい合って座っていた。

私が慌てて否定したことで、ようやく皆の視線も外れた。

(ほっ…。)

「では、フニクリさんも違うということですな。
 ならば、霊能者は【私かプシケさん】ということになりますな。
 おかしな話だ、鏡によれば霊能者は1人しかいないということですが」

中央の大テーブルでは、裁判官のカーマインとプシケが睨み合っていた。

「そうですね、私からすればあなたが偽者だというだけですけど。
 人狼騒ぎなんていうのは信じがたいけど、偽者の霊能者が出てくると
 いうことは、本当に人狼が動き出しているんでしょうね!」

二人で並ぶと、背丈には大分差がある。
カーマインは裁判官という職でありながら、鍛えられた大きな体格をしており
私は威圧感のある彼の風貌が少し苦手だった。
それでも、プシケは平然とカーマインを睨み返してそう言った。

「まぁ、皆さん。
 人狼が本当にいるかどうかは解りませんが、今日の所は
 ひとまず各自で『占いたい人間』の希望を出して解散しましょう。
 もし占い師という方が本当にいるのなら、
 最も票の多かった方を占ってもらうということで」

終わらない議論を打ち切った男性、名前をなんと言っただろう。
…確か、丘の屋敷にいる使用人の人だったと思う。
そう、確かセバスチャンと言っただろうか。

古風な名前とは異なり、年老いてもいなければ
髪が白くもない、豊かでさらさらとしていそうな
深緑の髪を横手で流す姿は、一見とても使用人には見え難い。
不思議な感じのする人だった。
ともあれ、今日はセバスさんの言うとおりにして
お開きとなるようだった。

思い思いに、皆が紙きれに何事か書いて去っていく。
書かれた紙切れは、酒場の壁にかけてあるボードに
給仕服の女性が一枚ずつ貼り付けていた。

(あれは誰だったかしら、あまり人前に出ないメイドさん…)

出てこない名前に、私は記憶の呼び出しを諦めた。

人狼、なんて私が小さい頃からずっと、子供を寝かしつけるための
よくある御伽噺だと思っていた。
今、こうして遠くのテーブルに集まり喧々と言い合う村の人達を
眺めていても、どうにも実感が湧いてこない。

「…フニクリ、あなた死ぬわよ?
 そんなんじゃ。
 言っておくけど、私だってもしかしたら人狼かもしれない。
 あなたがそうかもしれない、私も、あなたも、お互いに信用できない。
 そうなるかもしれないのよ?」

そんな私を見かねたのだろうか。
ジュリエットは、その形のいい細い眉を顰めていた。

ジュリエットの言いたいことは、いくら私が抜けてるといっても
全く理解できないわけじゃない。
誰が狼か、というだけじゃないんだ。
私だって、他の人からすれば「狼かもしれない」のだと。
解ってはいる。

それでも。

「それでも、私には実感が湧かないよ…。
 ジュリエットやクレアを疑うなんて無理。
 霊能者だ、って名乗っているあの2人だって、
 私は幼馴染のプシケがきっと本物に違いないと思ってる」

私を見据え続けるジュリエット。
瞳を見つめ返すことはできず、俯きながらの呟きには
なってしまったけれど、私はなんとかそれだけを言葉にした。

「…そう。
 まぁ、あなたが狼だなんて私も思ってないけどね。
 人を騙さなきゃいけないのに、あなたじゃ荷が重いわ、フニクリ」

そう言って、困ったように笑う顔は
長年私が見慣れてきた、いつものジュリエットだった。
呆れられたのかもしれない。
それでも構わないと思った。
この時は、まだ―――



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