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ノベライズ人狼 1日目 昼

――1日目 18:27 村の酒場にて

     
「人狼なんているわけがなかろう、これだから若い連中は…」

まずい、と思った時にはもう遅かった。

久々に村へと帰ってきたと言うのに、早速地雷を踏んでしまうなんて。
テーブルの向かいに座る、この顰め面を崩さない保安官が
一度始めた説教を中々やめない人間だ、なんてことは昔から知っていたのに。

「あ、あのクラウスさん!御伽噺です、解ってますから!」

たまの帰省で気が緩み、ちょっと昔怯えた御伽噺を話題に出した、
私としては本当にそれだけのことだったのだけど。
この人――クラウスさんにとっては、絶好の"酒の肴"だったのだろう。

「いいかねフニクリ君、きみが何年だか前に村を出てから随分経った。
 年頃の娘さんらしく立派に成長していると思うし、装いも華やかで喜ばしいことだ。
 だが、だがね。いいかね、フニクリくん。
 街に出たことで、悪い文化も吸収してしまったようだな。
 わたしの若い頃は……」

「ひえぇ~…」

中身の空いていた手元のグラスに、自らお酒を並々と注ぎ
長期戦の構えを見せ始めた彼に対して、何か救いがないものかと
視線を彷徨わせる。

古ぼけて、半開きになった入口のドアからいまにでも
私の救世主様が現れて、ここから私を救い出してくれ・・・

「ほんとにきた!?」

多分に諦めを含んだ願望が、叶ったわけではないだろうけど
思わず叫んでしまった私は許されると思う。
丁度店内に入ってきた、見知った救世主を見かけたのだから。

「おー、フニクリじゃないの、早かったわね!
 …ほらクラウスさん、そろそろ見回りの時間ですよ!行った、行った!」


「む、む、プシケ君か。そういえばもう、そんな時間だったのだな。
 では行ってくるとしよう、このグラスは君たちで空けてくれたまえ」

数年振りに再会した幼馴染は、そう言って席を立つ
"やっかいごと"を見送ると、そのまま空いた席に座った。
色素の薄い栗色と、二房に分けて結ばれたサラサラの髪。
健康的な白い肌に、ぱっちりとした大きな瞳。
小さい頃から整った容姿で、男の子には人気があったことを覚えている。

「久しぶりね~、プシケ。相変わらずのきれいで羨ましいわ。
 今日は、仕立て屋の仕事は?」

プシケは見た目に合わず、クラウスさんの残したグラスを
豪快に煽りながらカラカラと笑った。

「終わったわよ、今日はもう。とはいってもいつもそんなに忙しくないけどね。
 人口もそんなに多くないでしょ、この村。
 日が暮れてくる頃には、大体店じまいしてるわ」

そんなものかしら?
仕立て屋の仕事、というものが私には今一つ解らないが、
昔から要領のいい幼馴染のことだから、きっとそうなのだろう。

プシケの言う通り、この村は人口が少ない。
少ない、という表現すら適当ではないかもしれない。
基本的にみんな外へ出稼ぎに行っているので、村にずっといる
という人はほとんどいないのだから。

(10人前後、ってところかしら?)

きっとそうだろう。

そんな村だから、世代の近い子供は皆が幼馴染になる。
家が隣同士だった私とプシケ。
それから、ジュリエットとクレア。
他には、丘の上に住んでいるお屋敷のお嬢様や
外から越してきた何人かの男の子達がいた。

でも、私が特に仲良くしていたのはプシケ、ジュリエット、
それからクレアの3人だった。
好奇心旺盛で、少し変わり者のプシケ。
いつも冷静で、理知的なジュリエット。
イタズラ好きで、おちゃめなクレア。

クレアが変なことを思いついて、プシケがそれをエスカレートさせる。
私はいつも手伝わされたり、巻き込まれて。
後始末をジュリエットがやってくれて、また最初に戻る。

(あの頃は毎日が新鮮で面白かったなぁ。)

「――もごっ」

少し物思いにふけっていたら、急に口の中に何かを詰め込まれた。
目の前で大笑いするプシケを尻目に、もごもごと口を動かす。
…食べなれた味だ。

「相変わらずだねー、フニクリは」
「街での平常運転もこんな感じよ、フニクリは」

パリッとした衣の食感。
噛んでみるとぎゅっと脂の出る肉。

酒場のコック、ダブディさん特性の唐揚げだろう。
なぜ急に私の口へと唐揚げが詰め込まれたのかは解らないけど、
不可解さとおいしさと不満とをごちゃまぜにしながら、
聞きなれた声に誘われて、首だけで後ろを振り返る。

「もごっ。……クレア、ジュリエット!」

クレアは、プシケと正反対にこげ茶に近い髪だった。
それは今も変わらないけれど、髪型がショートになっていた。

「あ、これ?
 短くしてみたのよ、どう?」

私の視線に気付いたのか、後ろに立っていたクレアが
髪の裾を触りながら私の左隣の席へと着いた。

「いいんじゃないの?
 私は似合ってると思ったけど。フニクリはどう答えるかしらね」

クレアの反対、私から見て右隣。
座ろうと椅子を引く手を途中で止めて、にやにやと
ジュリエットが笑いかけてきた。

「クレアは短くても似合ってると思うわよ~。
 ジュリエットは何も変わり映えしないけど~!」

少し口調がとがってしまったのは仕方ないことだろう。
ジュリエットとは、普段から街でも会っているから当然だけど。

「そお?
 ありがとう、それはそうとジュリエットもそろそろ髪型変えたら?」

クレアも満更でもないようだ。
明るい茶色の髪を野暮ったくおさけにしただけのジュリエットは、
昔からずっと髪型というか、外見が変わらない。

「私はいいのよ、面倒だし。
 見せる相手もいないし、みすぼらしくなければそれで」

興味なさげに答えて、テーブル脇のメニュー表を
開き始めるジュリエット。

「フニクリもそうだけど、ジュリも相変わらずねー。
 折角街に出たんだから、ロマンスのひとつでも提供しなさいよ。
 村の仕立て屋なんて探してもロマンスなんかないんだから」

(…プシケは大分ストレスが溜まってるみたいね)

「フニクリのほうはなくもないみたいだけどね?」
「ちょ、ジュリエット!?」
「あーら何かあるんじゃないの、聞かせなさいよ!」

懐かしい顔なじみ。
昔の話、今の話。
この時の私―――いや、"私達"は、その夜巻き込まれる
事件のことなんて何も知らなかったのだ――
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